テトラポットの上

荒井コウスケさんのブログリスペクトです!目標はブルーハーツ全曲解説!

すてごま

まず、タイトル『すてごま』の意味ですが、
「将棋の対局で戦いを有利に進めるために相手にわざと取らせる
コマ」を言います。

この曲はブルーハーツ6枚目のアルバム、『STICK OUT』から。
初期のアルバムが有名なブルーハーツですが、私は
このアルバムが一番好きで、この前限定でLP盤が
再販された時に即買いしたのがこのアルバムでした。
もちろんCDも持っているのですが。
アルバムの初っ端が、この曲になっています。

この歌が発表された1992年に、自衛隊がブラジルに派遣
されています。そしてこの時のライブツアー名が、
PKO TOUR 』。これは、『Punch Knock Out Tour』の
略ということになっていますが、おや!たまたま
国際連合平和維持活動」と同じじゃん!
ということはあり得ないですよね。

こうした背景を知っていれば、一見バカっぽいこの歌の
歌詞も、ヒロトがどんな想いを込めてこの歌詞を書いて
いるかが分かると思います。

ただ歌詞は、おバカな自分勝手ぶりがウイットに富んだ表現
で描かれていて、楽しく聴けます。

何か理由がなければ 正義の味方にゃなれない
誰かの敵討ちをして カッコ良くやりたいから

君 ちょっと行ってくれないか
すてごまになってくれないか
いざこざにまきこまれて
泣いてくれないか

部下に「すてごまになれ」と言う、正義の味方(笑)。

覚えてるはずがないだろ 俺はやってない

覚えてるはずがないのに、やってないと言う(笑)。
政治家の釈明でもありそうな。

そして最後では「泣いてくれないか」が
「死んでくれないか」に変わり、
曲も自分勝手さもクライマックスを迎えます。

ブルーハーツのテーマ

Wikipediaによれば初期のブルーハーツのライブの出だしは、
いつもこの曲だったそうです。コウスケさんのブログでは、

あきらめるなんて 死ぬまでないから

このフレーズに尽きる、これが言いたいための曲なのだろう
と書いておられます。確かにその通りだと思いますが、同時に

人殺し 銀行強盗 チンピラたち 手を合わせる 刑務所の中

出だしのこの部分。恐らくこれが問題でこの曲は自主制作と
なり、アルバムにも入らなかった。そこまでしてこの歌詞に
こだわった理由はなんだろう。「あきらめるなんて…」の
一言が言いたかったのであれば、他に方法はあったはずです。

『手を合わせる』というのは「拝む」、許しを請うような
ニュアンスで理解しています。これは心底後悔して祈るよう
にも受け取れるかもしれないですが、人殺し・チンピラ等という
言葉を使っているので、単にポーズである印象もあります。
もしかしたら抽象的な、自分勝手で心底反省することのない、
私達の中にいる「人殺し」「銀行強盗」「チンピラ」
なのではないか…考えすぎでしょうか。

そしてここで、『少年のうた』が聞こえてくる。
「誰の胸にも」とある。「誰の」とあるのでもちろん、
銀行強盗やチンピラも含まれるはず。耳を澄ませば、
という条件はありますが。澄ますのは耳でも、聞こえて
くるのは耳ではなく、「胸に」もミソです。

この少年のうたがTHE BLUE HEARTSなのかもしれません。

そして、

何か変わりそうで 眠れない夜

という歌詞からはワクワクするような期待を感じますが、

君の胸は明日張り裂けるだろう

何気なく歌われている、この歌詞に注目したい。
「胸が張り裂ける」という言葉は、喜びの意味では
使われません。辞書を見ると、

悲しみや苦しみで胸がいっぱいになる

とあります。何か変わりそうな予感は、外れた。
眠れないほどの期待は、あっけなく裏切られた。

絶望があるからこそ、

あきらめるなんて死ぬまでない

という歌詞が光るのです。

月の爆撃機

かなり更新をさぼっておりました。
自分の乏しい言葉でTHE BLUE HEARTSの魅力を
表現するのは難しいのですが…いつか誰かに届き、
「へえ、聴いてみようかな」に繋がることを願って。

今日紹介したい『月の爆撃機』は私がブルーハーツ
の中でも一番好きな曲です。もちろん一番なんて
難しいし、選ぶのもナンセンスなのですが、でも
やはり一番好きです。

一言で言うと、「人生の勝負の時」の歌だと思いますし、
また、その時の張りつめた気持ちや孤独を歌っている、
そう思っています。

超名曲でファンの間でも結構人気が高い歌なのですが、
何故かシングルはおろかベスト盤にも収録されて
いませんでした。ようやく2015年に発売された30周年
記念のベスト盤に、万を辞してこの曲が入りました。
『僕の右手』や『歩く花』も入っており、
かなり勧めやすいベスト盤になったと思います。

最初のフレーズ、「ここから一歩も通さない」は、後に
出てくる爆撃機コクピットのことでしょうか。
もちろん、精神的な領域を言っているのかもしれません。
友達も恋人も入れない、という歌詞は、
大切な人にも頼れない、頼ってはいけないという決意
にも聞こえます。

そして何度も出てくる、
「手掛かりになるのは 薄い月あかり」
というフレーズ。
薄暗い、かろうじて見える月の光が頼りという
不安で心細い状況であることが伝わって来ます。

次の一節、興味深いと思いませんか?
場面が変わり、逃げ惑う人々の目線になっています。
主人公の爆撃機は「伝説の爆撃機」と呼ばれていて、
恐れられているようです。
「どんな風に逃げようか すべては幻と笑おうか」
実にヒロトらしい言い回しですが、
ここは自分の勝負、あるいは挑戦により傷付く人が
いる、あるいはいるかもしれない。
それでも勝負を降りる訳にはいかない、
という決意のように解釈しています。

そして場面はコクピットへ。
白い月を背景に飛ぶ爆撃機のシルエットが想像
出来るでしょうか。
そしてまた興味深いのは、
「僕は今コクピットの中にいて」
が、次には
「錆びついたコクピットの中にいる」
とわざわざ言い直されていることです。
「錆びついた」という言葉から、
伝説の爆撃機と言われたこの爆撃機
決して無敵で安心出来る乗り物ではないことが
読み取れます。

そして「いつでもまっすぐ歩けるか」の
最後の一節。ここも暗がりで一歩間違えると
大変なことになるかもしれない緊張感が
伝わって来ます。そしてそのような状況でも
最終的には頼れるのは己のみ、という
この歌のテーマが繰り返されているようです。
真島さんのギターも超かっこいいです。
是非聴いてみて下さい。